『誰ですか』
小さな頃は、鏡の向こうは不思議の世界。
何時か反射する壁を抜けて、向こうの世界へ行けると思っておりました。
然し、今この手に触れるのは、冷たい冷たい透明の壁。
どちら様の物だか判らないお顔が、途方に暮れた様に私を見詰めております。
あのお顔は、一体誰の物だったのでしょうか。
鏡を覗くと、いつも私の事を見詰めていらっしゃるのですけれど。
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